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「どうやら、時間がないようだ。出来れば手荒なことはしたくないが。」
敵が動く。
俺は構えた、はず。全身に衝撃、吹っ飛ばされた。見えなかった。
正也が海に抱きつくのが見える。
「離れなさい。」
鬼が二人の前に立っている。銀髪の細い体。
「いやだ。」
正也は海にしがみつく。
「怪我をしますよ。」
鬼は正也の肩に手を掛ける。
シュッと空間を裂く音。
同時に空間が二か所で裂ける。それぞれから何かが飛び込んでくる。一人は秋。もう一人は、京。子供の姿だ。すかさず京は敵に飛びかかる。
奴はそれをかわしつつ、秋に向かう、と見せかけて、器用に二人をかわし、姿を消した。
正也と海の横に京が立っている。
「京。・・・・・・京、お前戻ってこい。俺の、俺たちのところへ。」
正也が京に向かって言う。
京が正也をじっと見ていたが、ふっと顔を逸らす。
突如、和正と皐月が姿を現す。
「和正・・・・皐月。これは、お揃いで。」
そう言った京の表情が険しくなる。
和正は京に向かって手を差し出す。
「私たちはお前と争う気はない。わたしたちは仲間だ。戻ってこい、私のところへ。」
「・・・相変わらずだな、お前。勝手なことばっか言いやがる。ごめんだね、正也はもらってく。」
京は正也の腕を掴む。
ガツンっ京が吹っ飛ぶ。
「お前なんかに、渡すか。」
海が京を殴った。
あいつ。
「ってえ」
京は起き上がって、海を睨む。
やばい。京の体から炎が沸く。至近距離。炎は海に向かう。
「やめろ、京っ」
正也が叫ぶ。
海は腕で顔を覆う。が、炎は海の前で止まった。海の前に飛び込んだのは、皐月。炎を受けて、地面に崩れ落ちる。
「皐月っ」
和正が叫んで掛け寄る。皐月を抱き起こす。
「お前っ」
和正は京を睨む。
「な、あんたにとって大事なのは皐月だろ。あんたが呼ぶのはいつも皐月だ。俺じゃない。そんなんで、よく俺に戻ってこいなんて言えたよな。」
京は怒るというよりは、さびしげにそう言い残して消えた。
「京っ、、、待てっ。」
秋が叫んで、秋の姿も消える。
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