仲間4(海)

9/11
前へ
/326ページ
次へ
 戻ると、部屋の前に正也が立っている。 「あー、いた。起きたらいないからびっくりした。」 「ああ、わりー。」 「うんこだって。」  秋が言う。 「はあ?トイレあるけど。」 「落ち着かんのだと。」  正也は昨日と違って普通に話している。 「なんだ、俺の誤解は解けたのか。」 「ん、うん。まあな。」 「そうか、それはよかった。」  秋は満足そうだ。 「そんじゃ、帰るか。」  秋が俺の顔の前に手をかざす。  とたん意識が、遠のく。  気が付くと車の中だった。車の後部座席、隣に正也がいる。その向こうに秋。  運転手と助手席はスーツにサングラスの男。  俺、また意識を。 「もうすぐ家に着くから。」  正也が俺に言う。  家の前に車が停まる。俺が降りると正也も降りてきた。 「ごめんな、いろいろ、気分悪いとかないか。」 「ああ、平気。」 「たぶん、これで終わりじゃないと思う。まだ続くみたいだ。」 「え。」 「だから、これ。」  正也が何か差し出す。 「何これ。」 「ああいう変なもんから守ってくれるらしいから。いつも持っといて。ただ、あまり普通の人には対応してないから辛くなったら外して。害はないから。」 「ああ、わかった。」  受け取る。  何の変哲もない小さな機械だ。おもちゃにも見える。 「海、迷惑かけて、、」  言いたいことはわかった。 「やめろ、やめろ。いいんだよ。わかってるだろ、迷惑とか思ってない。」  正也は俺をじっと見ると、いきなり抱きつく。正也はギュッと俺の首に腕を回す。 「ありがとう、海。」  俺は固まる。  正也はすっと身体を離して、じゃあ、またなっと車に乗り込む。そのまま車は走り去る。俺は車が見えなくなってもその方向を見ていた。  家に入ってリビングの横を通り階段へ向かう。リビングにいた妹と目が合う。 「ただいま。」 「おかえり。」  自分の部屋へ行って着替えて、ベットに寝転がる。
/326ページ

最初のコメントを投稿しよう!

704人が本棚に入れています
本棚に追加