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正也がくれた小さなメカを取り出す。小さなランプがチカチカ点滅してる。作動しているサインかな。どういう効果があるんだろう。辛くなったらといわれたが今のところ何もない。なんか電波とかが出てるのか。とりあえず、ポケットに入れる。
“これで終わりじゃない”か。他のやつなら勘弁してほしいと思っただろうが、正也に言われるとうれしい。距離が縮まった気さえする。
抱きつかれた感覚を思い出す。抱き締め返しときゃよかった。いったい何を思って抱きついたんだか。俺の気持ちを知ってる癖に。あいつのことだから何も考えてないんだろうけど。
昨日の事を思い出してみる。俺を狙ってたって言ってたな。どういうことだろう。何のために?“私には必要ないようです。”俺の何を必要としてるんだ。
あの男、いったい。
「、、っつ」
一瞬胸の奥で何かが疼く。なんだ、このいやな感じ。
「くっ」
触手が正也の首に、身体に巻き付く。正也。いつの間にか触手はあの金髪の美形に変わる。正也を後ろから抱きしめる。やめろ、正也に触るな。
「・・っ」
自分の部屋だ。いつの間にか眠ったらしい。
変な夢を。
触手。昨日自分の体に巻き付いたのを思い出す。ゾクッと寒気がする。
悠馬に怖くないのかと聞かれて、あのときはああ答えたけれど、こうして一人になってみると急に恐ろしさが込み上げてくる。正也と悠馬といることで安心してた自分に気が付いた。
ポケットに手を入れて、正也がくれたメカがあることを確認する。大丈夫、守られてるらしいし。とはいうものの、なんとなく心配になってリビングへ下りる。
妹の雫がテレビを見てる。
「昨日大丈夫だったか。」
「何が。」
「俺いなかったけど、なんもなかった?」
「なにもないよ。」
「親父とお袋は?」
「お父さんは仕事、お母さんもパートだよ、どうしたの?お兄ちゃん。」
「何もないけど、お前はさいきん周りで変なことないか?」
「変なこと?」
「物騒だからな」
「大丈夫だけど、なんかあった?」
「いや、ちょっと変な話きいたから、できるだけ早く家に帰るようにしろよ。」
「変だよ急に。お父さんみたい。そうえいば、このまえ来てた人だれ?」
「ああ、悠馬だ。中学の同級生だけど、さいきん仲良くなった。」
「そうなんだ。なんか、変わった人だね。」
「変わった人って、お前ちょっとしか見てないだろ。」
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