意外な相手 2(海)・3(悠馬)

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「鈴木だよ。」 鈴木?ピンとこない。 「まだ、だめか・・・鈴木悠馬。同じ中学で陸上やってた。」 悠馬。あぁ、あの。 「おお、鈴木か。久しぶりだな。いや、わるい。なんか雰囲気が違いすぎて。」 「ごまかしてんじゃねーよ。傷ついたわ。」 「いや、ほんと。なんか変わったな。」 「そんなことねぇよ」    携帯が鳴る。鈴木のだ。着信画面をみて鈴木はため息を着いて電話に出る。  「おお、いや、もう帰るし。なんでじゃねーよ。連絡くらいして来いよ。俺は暇じゃねーんだよ。じゃーな」    ブチ。  なんか、怒ってるっほいな。 「そんで、村山なんかあった?」 「は?」 「すんげー思いつめた顔してたぞ、さっき。このまま線路に飛び込むかと思った。」    あ、見られてたんだ。 「え、そうか?そんなことねーよ、はは。」    ごまかす。 「まぁ、いろいろあるだろーけど、あんま思いつめんな。考えてもしょうがないこともあるし。」 俺の方は見ずに、まっすぐ遠くを見るような目で鈴木が言う。 「あ、ああ、でもマジでなんもないよ。」 「ならいいけどな。」 「お前こそ、大丈夫かよ。」 「ん?」 「電話、怒ってたじゃん。」 「ああ、あれは怒ってないよ、怒ったふり。」 にっと悪戯っぽい笑顔をする。 「いろいろあんだよ、俺もさー。」 そういいながら、鈴木は両腕を上げて伸びをする。 「あー暇になっちゃったなー。」  え、いまいろいろあるって言ってなかったっけ、と突っ込みたくなる。  とりあえず、来た電車に一緒に電車に乗り込む。帰る方向は同じ、そりゃそうか、中学が同じなんだから。  着信音が鳴る。また、鈴木の携帯だ。が、さっきとは違う音。さっきは着うただったが、今度はただの呼び出し音。電車の中だが、悪いっと言って電話に出る。 「はい、鈴木です。すみません、いま電車で、はい。え、はい、わかりました。この足で向かいます。大丈夫です。はい、失礼します。」  何かあったっぽい。それにしてもえらく堅い口調だな。 「悪いな、急用でさ」  電車の中で携帯に出た断りだろう、意外に堅いな。  ふうっとため息をついて何か考えている。
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