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「村山、お前今から暇?」
「え?」
「ラーメン食いに行こうぜ、うまい店あんだ。」
「ああ、いいけど。お前さっき電話でどっか行くとか言ってなかったか。」
「ん? ああ、いいの、いいの。まずは腹ごしらえ。」
特に断る理由もないので、付き合うことにした。それにしても。鈴木ってこんなフレンドリーな奴だったっけ。どちらかというと壁があるタイプだったような気がするけど。途中の駅で降りて、駅前のラーメン屋に向かう。
4人掛けのテーブルが3つとカウンター4席のラーメン屋のテーブル席に向かい合って座る。カウンターにサラリーマンが二人。テーブル席の一つに高校生のグループ。並ぶことも珍しくないくらい人気の店なので、この時間にしては空いているらしい。
にしても、鈴木の奴、よくしゃべる。ほんとにあの鈴木なのか。っといっても、たわいないことばかりだが、俺の名前が、名字が村山なのに、名前が海ってなんかおもしれーし、よく見ると村と山と海で、田舎だとか訳のわからないことを言って笑ってやがる。
「あのさ、鈴木」
「んー」
「お前、なにがあったの?」
「ん?」
「中学のとき、こんなじゃなかったよな。もっとこう、真面目っていうか、青少年っていうか。」
「いや、もともとこうだけど?ほら、俺たちあんま接点なかったからわかんねーだけだって。それに俺は今でも青少年ですよ。」
にこっと笑う。
掴めない笑顔。
「ふ~ん、そんで陸上は?お前成績よかったよな。」
「もうやってない。」
「なんで?」
「ん~、他におもしろいっていうかやりたいことできた。」
「なんだよ。」
「ん?ナイショ。」
「は?言えないよーなことなの?」
「え、う~ん、なんていうか、はずかしいっていうか。」
あ、そういうことか。
「ああ、悪い、そういうことね。色男。お前人気あったもんな。」
「え?」
「そりゃあ、走ってるよか、おもしろいよな。」
感心したように言って茶化してやる。
「え、違うって、そういうんじゃないって。」
「いいって、いいって、隠さなくても。」
「いや、マジで違うから。」
真面目に否定しているところを見ると、女じゃないらしい。
まあ、そんな突っ込む必要もないので、この辺にしとくか。
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