意外な相手 2(海)・3(悠馬)

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「村山、お前今から暇?」 「え?」 「ラーメン食いに行こうぜ、うまい店あんだ。」 「ああ、いいけど。お前さっき電話でどっか行くとか言ってなかったか。」 「ん? ああ、いいの、いいの。まずは腹ごしらえ。」    特に断る理由もないので、付き合うことにした。それにしても。鈴木ってこんなフレンドリーな奴だったっけ。どちらかというと壁があるタイプだったような気がするけど。途中の駅で降りて、駅前のラーメン屋に向かう。    4人掛けのテーブルが3つとカウンター4席のラーメン屋のテーブル席に向かい合って座る。カウンターにサラリーマンが二人。テーブル席の一つに高校生のグループ。並ぶことも珍しくないくらい人気の店なので、この時間にしては空いているらしい。   にしても、鈴木の奴、よくしゃべる。ほんとにあの鈴木なのか。っといっても、たわいないことばかりだが、俺の名前が、名字が村山なのに、名前が海ってなんかおもしれーし、よく見ると村と山と海で、田舎だとか訳のわからないことを言って笑ってやがる。 「あのさ、鈴木」 「んー」 「お前、なにがあったの?」 「ん?」 「中学のとき、こんなじゃなかったよな。もっとこう、真面目っていうか、青少年っていうか。」 「いや、もともとこうだけど?ほら、俺たちあんま接点なかったからわかんねーだけだって。それに俺は今でも青少年ですよ。」 にこっと笑う。 掴めない笑顔。 「ふ~ん、そんで陸上は?お前成績よかったよな。」 「もうやってない。」 「なんで?」 「ん~、他におもしろいっていうかやりたいことできた。」 「なんだよ。」 「ん?ナイショ。」 「は?言えないよーなことなの?」 「え、う~ん、なんていうか、はずかしいっていうか。」 あ、そういうことか。 「ああ、悪い、そういうことね。色男。お前人気あったもんな。」 「え?」 「そりゃあ、走ってるよか、おもしろいよな。」 感心したように言って茶化してやる。 「え、違うって、そういうんじゃないって。」 「いいって、いいって、隠さなくても。」 「いや、マジで違うから。」    真面目に否定しているところを見ると、女じゃないらしい。  まあ、そんな突っ込む必要もないので、この辺にしとくか。
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