意外な相手 2(海)・3(悠馬)

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 リナが聞いてくる。  暇じゃないけどね。もう行くと言うので、なんとか正也のことだけ聞き出す。  リナが正也と同じクラスで、やはり3日前から休んでいるらしい。メールをしたが返事はないということだ。お勉強に行くお嬢様方を見送り、正也の通学路へ向かう。  なぜ、俺が正也の通学路を知っているかというと、正也は特別な理由でうちの組織に保護されている。うちの組織というのは、各国政府公認の秘密組織で鬼退治を目的として古くから存在している。“鬼退治”、“鬼”といっても実際絵に描いたような角の生えた赤や青の鬼さんはみたことがないけれど、妖怪とかそうゆう類と思ってもらえばよくて、人間の隣に住む生き物だ。その存在を知る者は少ないが、実は人間のように暮らしている鬼もいるし、鬼になってしまう人間もいる。    状況によっては人間を捕食したり危害を与えるものもいるので、その阻止、防衛、均衡保持、場合によっては保護を目的に存在している。彼らの人知を超えた能力に対応するため、対応できる能力者が集められている。  で、俺もその一人。ある時、その存在を知り自分の特殊な力に目覚めて、この組織に所属している。打ち込んでいた陸上をやめた理由だ。危険も多く下手をすれば命を落とすことになるので、本来18歳以下はダメだと言われたが、そこを何度も頼み込んでなんとか潜り込んで勉強させてもらっている。だから、危険な仕事はほとんどない。情報収集や調査なんかの雑用ばかり。それでも自分の実力からしてそれが妥当なのだろうと今はその仕事を一つ一つこなしている。    今回の正也の調査もそれだ。正也の兄さんの和也さんは大学生だが組織で仕事をしている。和泉さんを訪ねて組織のビルに行ったときに顔を会わせてお互いびっくりした。和也さんは陸上のOBでもあるので前から顔見知りだった。そこで、正也のことを聞かされて、あいつは能力者ではないがいずれ覚醒するまで保護下にあると聞かされた。しかし本人は組織のこと鬼のことなどは一切知らされていない。    組織の人間で正也の同級生ということで、正也についての一通りの情報は以前からもらっている。  通学路もその一つ。  
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