意外な相手 2(海)・3(悠馬)

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 賑やかな表通りから裏通りに入ってしばらく歩く。人気がなくなり、しんと静まり返った倉庫街に出る。誰もいない。    当たり前だ。うちの保護地区だから普通の人間は自然に避けて通るように結界が貼られているし、基本的に正也しか通れないようにしてある、はず。  結界ぎりぎりに立つ。  強力な結界だ。俺じゃとても侵入できない。そっと手を当てる。能力(チカラ)を込める。パシンっと音がして、跳ね返される。手に痺れが走る。結界は正常。    辺りを見回すが、特に変わった様子はない。結界の中に入れないので、結界に淵を歩いてみる。夜になって少し冷え込んできた。考えていると、ふわっと甘い香りがしたような気がした。  なんだ?花の匂い?辺りを見回すが花なんてない。    携帯が鳴る。メールだ、友達から遊びの誘い。今日は無理。適当に断わりの理由を述べて返信。さて、S高は明日にするとして、正也のアパートまでの経路も見た方がいいな。
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