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「もしもーし、正也ー生きてるかー」
やたらテンションが高い・・・。
叫んでるんじゃないかと思うくらい声がでかい。こいつはこれが普通だけど。携帯を耳から少し離す。
「おう」
普通に答える。おれはそんなにテンションが高くない。こいつに合わしてやる気もない。
「なにしてんの?」
「飯食ってるけど」
「おー!手作りか!」
「あー、まあな、鍋だけど」
「おー、いいねぇ、俺も鍋食いたい!今から行くわ」
ブチ。
返事をする間もなく、切られた。毎度のことだけど。
こいつ、いつも俺が一人だと思ってやがる!!俺だって彼女とかつれこんじゃって、よろしくやってる事だってあるかもしれないのに!
おれは鍋を食い終わって、テレビ見ながら海が来るのを待った。海は中学からの同級生で一番仲のいい友達だ。中学の時は一緒にサッカー部に入っていた。別々の高校に進学して、海はまだサッカーをしてる。俺は一応進学校なので、お勉強をしてる。だが、あいつはよくこうして俺を訪ねてくる。たぶん、俺の家庭事情を知ってて、心配してくれてるんだろう。情に厚いやつだから。
ピンポーン。玄関のチャイムが鳴る。
来た来た。
「はーい」
玄関のドアを開ける。うれしそうな顔をした海が立っている。
新しいゲームソフトを友達に借りて来ただのどうの言っている。テーブルの向かい側に座る。そういや、鍋食いたいんだっけ。
「鍋食うの」
「おう、食う食う」
しょうがねーな、準備をするか。自分の分しか用意してなかったので、野菜を切る。
ふと顔をあげると、海がこっちを見てる。
「なんだよ」
「いや、手際いーなと思って」
毎日やってんだよ、こっちは。
「しょーがねーじゃん。いつもやってんだから、誰もやってくんねーし」
「そっか、でも、お前と同じ状況でもやんねぇ方が多いんじゃねーの、普通。インスタントとかコンビニとかさ」
感心しているのか、こいつ。
ちょっと照れくさい。
「インスタントはおいしくないし、体に悪い」
「はは、まあ、そーだけど」
うれしそうに笑う。こいつはいつもほんとうれしそうに笑う。
鍋に具を入れて、カセットコンロの火を付ける。
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