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大学を出て一度自宅に帰り、泊まり込む準備をして正也のアパートに到着。合鍵を回す。人いる気配がする。リビングにいくとスーツ姿が二つ。笹島さんと青井さんだ。二人とも俺の方を向く。
「お疲れ様です。ありがとうございます。」
俺は軽く頭を下げる。
「ああ、和也か。和泉からお前が来るって連絡があったよ。」
“言うこときかずに飛び出してきたんだってな”ということだ。
「そりゃ心配だよな。兄弟なんだから。じっとしてろって方が無理だよ。」
青井さんがフォローしてくれる。
「責めてるわけじゃない。ただあの和泉に反抗できるのは和也くらいのもんだってことだよ。」
そうですね、普段は冗談言ってる笹島さんでも、仕事となると対抗できませんもんね。と青井さん。そこから和泉さんがいかに恐いかというやりとりが始まったが、俺は頭がくらくらしてきて、リビングの窓を開けた。
話の内容にではない。この部屋の匂いのせいだ。玄関を入ったときから甘い匂いがしていたが、リビングに来て匂いはかなりきつくなり、頭が痛くなるほどだ。二人はよくこんなところにいれたものだ。
「どうした、和也。」
もう夜なのに窓を開けた俺に不思議そうに笹島さんが聞く。青井さんも不思議そうに見ている。
「この匂い、なんですか?」
「匂い?」
「なんの匂い?」
「甘ったるい匂いです。頭が痛くなりませんか。」
笹島さんと青井さんは不思議そうに顔を見合す。
「青井、なんか匂うか?」
「いや、わからないです」
こんなきつい匂いが解らないってどんな鼻してんだ。とにかく頭が痛いのでしばらく窓際に立って外の空気を吸う。二人はあたりをうろうろして匂いを探していたが、やはり解らないようだ。
「それで、なにか解りましたか?」
「いや俺たちも学校とここを調べてたとこなんだが、これといって何も掴めてない。ただ休んで家に居たっていう割には部屋がきれいに片付いてる。アパートの結界も正常、侵入された形跡もない。」
「そうですか。」
「その荷物、ここに泊まるの?」
青井さんが俺の荷物をみて聞いてくる。
「はい、その方がいいかと。」
「そうか、じゃあ俺と青井はもう少しこの辺りを調べて来る。和也はここにいてくれ。青井、ついでになんか飯買ってこい。」
「そうですね、腹減りましたね。」
青井さんが素直に従う。
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