意外な相手 4 (和也)

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 俺も付いていきたいと申し出たが、この部屋の確保も必要だと言われてしかたなく留まることにした。たぶん和泉さんから笹島さんに俺に勝手なことをさせないように指示がでてるんだろう。  二人が出かけたので、部屋を見て回る。    正也の部屋もきれいに片付いている。何度か来たことがあるがいつもきれいに片付いていて、食事も自炊していた。特に変わったところも見当たらない。しっかりした弟だなと改めて感心する。しょうがないよな、両親がいないようなもんだし。    母親の部屋に行くと、ベットの上の布団は畳んで積んである。やはりここで生活はしていない。様子を見に来ているという話だが、きっと見に来ているのは本人じゃないことの方が多いだろう。母親の振りをした誰か別のスタッフだ。正也のいない時間を狙って、生活費を置いて、手紙を書いて、あたかも母親がここにときどきは帰ってきているかのようにみせかけているのだろう。    正月に母がここに来たのをみて、なんだちゃんと帰ってきてるのかと感心したがやはり違ったようだ。俺が一緒なのを聞きつけて俺たちの様子を見に来たんだ、きっと。正月だったし。  リビングに戻って窓を閉める。幾分良くなったが、まだ匂いは消えない。  このリビングが一番匂いが強い、というかここから匂いがしている。匂いの素を探して歩き回っていると、どうやらソファのあたりらしかった。正也のやつソファに何かこぼしたのか?ソファに座る気にはなれず、キッチンの椅子に座ってテレビを付ける。座っているだけでも部屋を守る結界が強力なことがわかる。ここに侵入するのは簡単じゃないはず。    母親が張った結界だ。彼女は強力な能力者で、父同様組織内の重要人物だ。父のように管理者ではなく父の指揮下で現場で動いている。重要事件、敵が強力な場合など並みの者では対応が難しい場合の対応に出ているらしい。直接本人から仕事のことを聞いたことはない。俺のまわりには母親と一緒に仕事をしている人はあまりいないので、詳しいことはしらない。唯一和泉さんは親しいようだが、俺が聞かない限り母親の話はしないし。  正也がこんなときにうちの両親は揃って不在とは、まったく・・・。  ピンポーン。チャイムが鳴る。笹島さん達はさっき出掛けたばかりだ。俺は恐る恐るのぞき穴をのぞく。知ってる顔だった。正也の仲のいい友達のたしか、海だ。
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