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「和也さん、俺もそろそろ行きますね。」
「ああ、遅くまで悪いな、悠馬も気を付けろよ。」
「大丈夫ですよ。」
悠馬と呼ばれてちょっと驚いた。元々俺と和也さんは中学の部活の先輩後輩にあたるのだが、俺から見てOBに当たる人で、顔を合わせたことはあったけれど面識は浅いし名前で呼ばれたことはない。笹島さん達が名前で呼ぶからかな。俺の方は組織に入ってから、皆が和也さんのことを名前で呼ぶのでそれにつられている。
席を立とうとしてふわっと甘い匂いが鼻に付く。部屋に入ったときから気になっていたけれど、芳香剤か?
「この匂いなんですか。」
和也さんが俺の方をじっとみる。
「わかるか?」
「え?」
「なんか甘い変な匂いがするだろ?」
「はい、俺が部屋に来た時はもっと匂いがキツくて、頭が痛くなって窓を開けてたんだ。でも、先に来ていた笹島さんと青井さんには解らなかったみたいで。」
「わからないって、こんな独特の匂いなのに」
「だろ。なんかわからんが、ソファになんかこぼしたんだろ、ソファから匂いがする。」
笹島さん煙草の吸いすぎで匂いわかんねえのかな。笹島さんはヘビースモーカーだ。でも、たしか青井さんは煙草は吸わないような。
「そうですか。なんかこう、不思議な匂いですね。」
「ああ、明日消臭剤でも撒くよ」
和也さんはアパートの入口まで見送ってくれた。
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