はじまり (正也)※R-18

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「お、もういいんじゃねーの、食えよ」   そろそろ炊けてきたので、声を掛ける。 「おー、すげー。いただきます。」 「正也はもう食ったのか?」 「おお、さっき電話もらったときに食ってたから」 「そうか、わりーな」  海は、うめーとかやっぱ鍋だなーとかいいながら、ガツガツ食べる。  こいつはほんと豪快だな。  あんまりうれしそうに食べてくれるので、ちょっと嬉しくなる、というか食卓を誰かと囲むのは久しぶりだ。  やっぱ、いいもんだな。  ふいに、海がこっちを見る。じーっと俺を見ている。 「な、なんだよ」  マジで、なんなんだ。 「別に、てか、見てたのはそっちだろーが」  海はふいっとテレビの方を向く。    いや、その、見てたけどさ。なんで機嫌悪くなるんだ。気まずい。なんか話さないと・・・そうだ。 「そういやさ、この前悠馬にあった。」 「誰?」  海がこっちを見る。興味無さそう。 「ほら、陸上やってた。」 「ああ。」 「そうそう、本屋でさ、なんか雰囲気変わってた。」 「どんな風に?」 「うーん。かっこよく?いや、ちゃらくなってた。」 「へー、色気づいたか。」 「ああ、そんな感じ。」 「そんで?」 「ああ、携帯交換した」 「そうなんだ、連絡してんの?」 「いや、その日だけ。またあそぼうやって」 「ふうん」  海は気のない返事。  なんなんだ、こいつ。今日はおかしいぞ。せっかく飯食わしてやってんのに!なにが気に入らんのだ。  悠馬か? 「なに、悠馬になんかあんの?」 「いや、別に俺そんな仲良くなかったし。」 「まあ、俺も仲よくねえけど。」  海は、うまかったといって箸を置いて手を合わせる。    鍋の中は、空っぽ。  こいつ、全部食いやがった。けっこう余分に入れたのに。さすが運動部。がたいがいいだけはある。  食べ終わったので俺は片づけに入る。  台所で洗い物を始めると、海が鍋を持ってきてくれた。  海は手伝ってくれると言うが、台所は狭いし、二人分の食器くらいすぐに片付くので、断る。
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