リストカッター

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リストカッター

引っ越しの次の日、私と薫くんとボーカルとボーカルの彼女と四人で遊園地に行く約束をしていた。 薫くんが家まで迎えに来てくれた。 いつも通り優しい薫くん。でもいつもとなんか違う薫くん。 必要に左手を隠している。真夏日には不自然な分厚いリストバンド。 電車に乗った時にそれはチラっと見えた。 リストカットだ… あんなに明るい薫くんから想像できない単語。 また胸が苦しくなる。 私は気づかないフリをした。 夜になりみんなとバイバイして、薫くんと二人きり。 思い切って聞いてみた。 『腕…』 『いつから気付いてたの?』 『朝から』 『そっか…。帰りたくないなー』 私と薫くんは終電ギリギリまで一緒にいた。
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