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1限目 幸か不幸か女子校行き
「川越様、あと数分で着きますが。」
「…わかりました。」
船と言うかフェリーの上。今は午前10時といったところか。
―俺の名前は川越卓也。高校2年だ。まあ、今までは星鴎学院という男子校に通っていたのだが、明日から女子校に…
―それは、つい半月前のことだった。学校の掲示板に、『次のテストでの最優秀者を女子校に転入させる』と張り紙があった。俺は女子が苦手だったこともあり、わざと勉強せずにテストを受けた…というのは俺の良心に反しているので、さすがに勉強はしたが。
―その結果、幸か不幸か俺が一位になってしまったのだ。どうやら拒否権はないらしく、俺は見事に連行されて、今現在フェリーの上にいるわけだ。
「それにしても、何で女子校へ?」
「はい、私の口からでよければ。」
ちなみにこの人は、俺を送ってくれている葛城さん。校長の秘書みたいなものに当たる人だ。
「実は、我が星鴎学院と、目的地である、小鳥女学院はかつて、友好関係にあり、よく優秀生徒を交換しておりました。」
「あれ、今はないですよね?」
「まあ、簡単に言いますと、ある年の男子が、あちらの女子たちがお風呂にお入りになられている間に、覗きをしたそうなのです。」
「ああ、なるほど…」
まあ、普通の男子はそうするアホもいるわな。
「でも『かつて交換していた』と過去形ってことはもっと何かしら理由があるんじゃないですか?」
「まあ、あるにはありますが…こちらの学院に来た女子が男子に集団強姦をば…」
「ああ、なるほど。」
俺は納得せざるを得なかった。普通は性欲に満ちるお年頃ですもんね。そりゃあ襲われますよ。
「…もしかして僕のこれって…」
「はい、友好関係を取り戻すためのひとつの手段でございます。」
あんの校長自分で行きやがれっての!何で俺が…
「なお、普通に授業を受けて卒業されれば、大学はこちらで用意いたしますので。」
「どこに?」
「K大学の理学部数学科でどうでしょう?」
なんでこういうことを言い出せるのか全くわからない。俺にはそんなこと知るかっての!でもK大学には惹かれるな…
「…普通に卒業できればいいんですよね?」
「はい。ただし条件として、成績はなるべく上位をお願いします。できれば、首席の方がよろしいのですが。」
「少なくとも一桁、ですか…」
あえて言おう。この学校は日本屈指のトップ校である。
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