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「やっぱり……ここで、変わってる」
そんな声が薄暗い部屋のパソコンを見る男の口から漏れる。
「だとすると……ここで、何かあったのか?」
「教えてあげましょうか?」
答えが返ってくるはずの無い独り言に向けられた女性の声に、彼は勢いよく振り向いた。
そこにいたのは六十四卦の萃をあしらった服を着た、金髪金眼の美女。だがどこか胡散臭さを感じさせている。
そんな彼女は口を開いた。
「ふふっ、驚かせてしまったようね。
せっかく教えてあげると言っているのに」
「いや、誰もいないはずなのに後ろから声をかけられたら誰だって驚くだろう?
それより、あなたは誰なんですか?」
彼女はその質問を待ち望んでいたかの微笑んだ。そして今まで何度も言ってきたのであろう、お決まりの台詞を口にする。
「あら、名前を訊ねるならまずは貴方から言うのが礼儀ではなくて?」
だが、彼の場合はその台詞の、相手より優位に立つ、という効果は発揮されなかった。
「……貴女を、不審な侵入者から美しい客人にするための質問だったんだが……」
溜め息をついて呆れるように言うその返答に彼女は驚いたように目を見開くと、少し頬を染めつつ彼に言った。
「……それは、どうも
礼を言うわ。
それでは、」
一息つくと彼女は
「私は八雲紫。
境界を操る幻想郷の賢者にして、その幻想郷を創った大妖怪。
とでもしておきましょうか」
彼の予想の斜め上を行く自己紹介をしてみせ、結局彼の優位に立って見せた。
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