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全く以て情けねぇことに、家からは一歩も出ていない。 それは二言、三言で済むようなことを斜め上から、万華鏡でもって眺め、それをデジタルカメラで写し、サイズ補正をかけ、プリントアウトし、前衛芸術家を志す造形大学生にコラージュ的施しををさせ、それを低解像度スキャンし、電子メールで送りつけるように伝えたがる彼の性分からは容易にその様を喚起させることができる。 只ボンヤリしていると、悲しいことに、いや、哀しいことなどはないのだが、彼は、俺には実にインヴィジブル、メタフィジカルな、それでいてフィジカルな欠如が在ることを忘れさせてはくれない。 彼はSという名前では亡かったからだ。 つまり、手の甲には痛みと共に半田ゴテが座っていた。と、後述を参照すればそういうことになるだろう。
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