1章 幸運を君に

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「どうだった?」 「37点…ヤマ張ってたけど見事にハズレたわ…ユキオは?」 僕は得意気に返却された答案用紙を見せた 「お前は運悪いのになんでそんなに点が取れるんだよ!」 「運に頼るようじゃお仕舞いだな」 僕の不運は既に不運を超えているものだと自分で思っている 直感でAだと思ったらBだった…なんてことは当たり前だ じゃあ直感でAと思ったからBにしておけば正解なんじゃないか? と思うと当然Aが正解 つまり僕がテストで点を取るには実力しかない 努力がそのまま結果として返ってくるのは嬉しいものだ 「お前の運の悪さで来週のテストも中止になるようなことが起きればいいのによー」 「例えば?」 「武装テロリストが学校を占拠するとか」 「そういうのは中学で卒業しろよ…」 いくら僕が不運とはいえ、そこまでの力は持っていない 僕の不運は地味だからこそ不運なのだ 両親と生き別れたとか、九死に一生を得たとか、そういう波瀾万丈な人生を歩んできたわけではない 誰しもが経験するようなちょっとした不運が次々にやってくるだけだ
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