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帰り道の信号全てが目の前で赤になるのも慣れている
今は別段急いでいるわけでもない
「あのぉ、すいません…」
信号が青になったのを確認し、横断歩道を渡ろうとした時だった
声のした方を振り向くとスーツ姿の女の人が立っていた
いや、よく見ると女の子なんじゃないだろうか?
スーツが見事に似合わない程の童顔とその身長
「…はい?なんでしょうか?」
「あなたは幸せですか?」
くわえて声まで幼い
こういうのは怪しい宗教の勧誘だとか、変な壺だのを売り付ける類いに決まっている
「そうですね。そこそこ幸せですよ」
「本当ですかぁ?」
失礼な物言いだ
嘘は言っていない
「すいません、ちょっと急いでるんで」
「あ、ちょっと待ってください!」
決まり文句で逃げようとしたが、信号は赤になっていた
完全にタイミングを間違えてしまった
「…待ってくれるんですか?」
違う
断じて違う
「あのですね、実は今、こちらの案内をしておりまして」
彼女は何やら一枚の紙を取り出した
ここの信号は長い
暇潰しにもなるだろうと紙を受け取る
「…ラックバンク?」
「はい、もし興味がありましたらお話だけでもどうでしょうか」
バンク、つまり銀行とかの類いだろうか?
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