1章 幸運を君に

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帰り道の信号全てが目の前で赤になるのも慣れている 今は別段急いでいるわけでもない 「あのぉ、すいません…」 信号が青になったのを確認し、横断歩道を渡ろうとした時だった 声のした方を振り向くとスーツ姿の女の人が立っていた いや、よく見ると女の子なんじゃないだろうか? スーツが見事に似合わない程の童顔とその身長 「…はい?なんでしょうか?」 「あなたは幸せですか?」 くわえて声まで幼い こういうのは怪しい宗教の勧誘だとか、変な壺だのを売り付ける類いに決まっている 「そうですね。そこそこ幸せですよ」 「本当ですかぁ?」 失礼な物言いだ 嘘は言っていない 「すいません、ちょっと急いでるんで」 「あ、ちょっと待ってください!」 決まり文句で逃げようとしたが、信号は赤になっていた 完全にタイミングを間違えてしまった 「…待ってくれるんですか?」 違う 断じて違う 「あのですね、実は今、こちらの案内をしておりまして」 彼女は何やら一枚の紙を取り出した ここの信号は長い 暇潰しにもなるだろうと紙を受け取る 「…ラックバンク?」 「はい、もし興味がありましたらお話だけでもどうでしょうか」 バンク、つまり銀行とかの類いだろうか?
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