1章 幸運を君に

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「口座…とかですかね?僕、まだ学生ですしバイトとかもしていないのでちょっと」 口には出さなかったが聞いたこともないような企業なら尚更ゴメンだ 「いえ、あのそういうのじゃないんです!いや、あの口座は口座なんですけど預けられるのはお金じゃなくて!」 お金じゃない? 僕も銀行のシステムについて詳しいわけではない しかし「へぇ、そんな口座があるとは知らなかったなぁ、じゃあ作りましょう」とはならない 「検討しておきますので。では失礼します」 そろそろ信号が青になる タイミングは完璧だ 「う…う…うわぁーん!」 立ち去ろうとする僕のすぐ隣で彼女が泣き出した 「え!ちょっ…!え!」 僕はどうしていいか分からずその場でうろたえてしまった 通行人の視線が痛い 僕が女の子を泣かせているようにしか見えない 男はペンキまみれ、女は不釣り合いなスーツ 注目度は五倍増しぐらいだろう 「うわぁーん!うわぁーん!」 「泣かないでくださいよ!ちょっと!あぁもう!話聞きますから!ほら、そこの店で!」 僕は無理やり彼女の手を引き、近くの喫茶店に連れていった やっぱり僕は運が悪い
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