マヨヒガ

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村人 「どひゃー! 美味そうなもんがいっぱい並んでるぞ!! ゴクリ」 座敷わらし 「食べても良いぞ? くくっ、後に己の愚行を悔やむことになるがな」 村人 「い、いやいや、他人の家だ。やめとこう」 座敷わらし 「食べないのか、ほほぅ……」 村人 「庭には綺麗な花が咲いて、鶏や馬もいる……この家の持ち主はたいそうな富豪に違いない。流れてきたこの赤い椀も間違って川に落としたのだろう。家に誰もいないのが不思議でならんが、とりあえず椀は置いていこう。返すものも返したし、帰るか」 座敷わらし 「……ホントに帰っていきおった……。何と無欲な村人じゃ。……この椀は、お前のものにするとよいぞ」 村人 「その帰り道、ふと川を見やるとあの赤い椀がまた流れてきた。『これは……貰ってもよいということだろうか?』しばし迷ったが、結局持ち帰り、米を計る椀にした。そうしたら、不思議なことにその椀で米を計ると、出しても出しても無くならないのだ。これは良いものをもらった……あの屋敷は山の神の御殿だったのかもしれんな……」 座敷わらし 「マヨヒガは、不幸と幸福の狭間……。マヨヒガを侵すもの、すなわち罰せられり。マヨヒガの平安を保つもの、すなわち福を与えられる――あの村人は、間もなく村一番の金持ちになったとさ。どんど晴れ」 完
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