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ナレーション
「見ると、玄関や軒先にたまっていた埃がすっかり無くなっていました」
にじこ
「どういうこと……?」
イグネ
「ささ、あがりなさいな」
にじこ
「は、はい……」
イグネ
「幾年ぶりかのぅ……屋敷に人が来るのは」
にじこ
「ここには誰も住んでいないの?」
イグネ
「住んでいましたじゃよ。沢山の人間が、入れ代わり、入れ代わり……」
にじこ
「……そうなの」
イグネ
「じゃが、今はもう誰もいなくなった。つい最近までは猫がいたが、ふらりと出ていったっきり帰ってくることはなかったですじゃ」
にじこ
「……淋しいわ」
イグネ
「いやいや、今でも人間たちのことを思い出すと、感謝してもしきれませんじゃ」
にじこ
「どうして?」
イグネ
「この屋敷は、元々屋敷の周りに生えていた木で造られたのじゃ」
にじこ
「……この家が……」
イグネ
「やはり地元で育った木の方が一番脂がのって、長持ちしますじゃ」
にじこ
「そうなの」
イグネ
「何より、ここで生まれ、ここで愛でられ、ここで朽ちることの出来る幸せ……これは何にも代えられぬ幸せじゃよ」
にじこ
「ここが好きなのね」
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