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イグネ
「えぇ。好きですじゃ」
にじこ
「私には、帰るところがないの。……いいえ、帰っても仕方がないの」
イグネ
「ほぅ……」
にじこ
「私の居場所はない。私なんか居ても居なくてもいいのよ」
イグネ
「悲しいことですじゃ」
にじこ
「そうね。私も悲しかった。……ここに来るまではね」
イグネ
「と、言うと?」
にじこ
「あなたは待ってる? また此処に住んでくれる人を……」
イグネ
「また此処で住んでくれる人間がいたら、もっと幸せじゃろうなぁ」
にじこ
「だから、よ」
イグネ
「ふむぅ?」
にじこ
「待ってる人がいるかもしれない……って思ったの。もしかしたら、ってね」
イグネ
「そうじゃの。きっとお嬢さんを待ってる人がいるはずですじゃ」
にじこ
「……私、帰る。……ありがとう、イグネさん。私、帰るわ」
イグネ
「ほっほ。気を付けるんじゃよ」
にじこ
「うんっ。それじゃあね!」
ナレーション
「そう言って、少女は屋敷を出ていきました」
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