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ひとりぼっちのお祭り野郎
からん、ころん、からん、ころん、
下駄の音はどうしてこんなに心を軽やかにするんだろう。
澄んだ音なのに冷たくはなくて、どこか弾んだ調子がある。
遠くから聞こえる祭囃子の音は、平べったくて掠れている。毎年流すテープはすっかり伸びてしまっているのだ。MP3プレーヤーの時代なのにそんなひどい音でも、浮足立つのを感じる。それは周囲の人々の雰囲気からでもあるのかもしれない。
衣砂川の水面は、向こうに見える出店の明かりを跳ね散らかしてキラキラと光っている。
それよりももっと綺麗な光の芸術が、今夜その上で乱舞する。
衣砂川大花火大会。
俺は待ちに待ったこの日に、早くも胸を躍らせていた。
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