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「じゃあ、鍵借りていきます。ちゃんと眠ってて下さいよ。」
口元に人差し指を当てて、ウインクして出て行った。
遠くで玄関の扉が閉まり、鍵が掛かる音がした。
まだ熱が高いみたいだ…。しばらくしてまた夢の中へ落ちていった。
**********
いつの間にか辺りが暗くなっていた。
体を起こすと少しクラクラしたが、トイレへと向かった。
トイレから出ると、台所の明かりが目に入り、自然と足を進める。
―ガチャッ
扉を開けると
「あ、起きましたか?熱は下がりました?」
彼の声…。あ、戻って来たんだ…。
「…椹木さん。いろいろありがとうございます。今日はもう遅いですし「美波さん…。」」
彼を見ると悲しげな顔をしていた。そんな事聞きたいんじゃないと拒否されている気がした。
「お粥食べて薬飲んで下さい。今日は側にいます。」
そう言って私を見つめた。
「…はい。」
椅子に座ると向かい合わせに彼も座った。
お粥を出され、食べようとする。
「…椹木さん。」
耐えきれずお粥を見ながら声を掛けると
「はい?」
ニコニコ笑顔で返事をしてきた。
「…そんなに見られたら食べれません!!」
キッと彼を睨むと
「私を惑わしたお返しです。」
惑わした?私が椹木さんを?首を傾げると
「…お粥を食べさせてはくれないのですか?と言ったり、手を握っててくれませんか?と言ったり、行かないで下さい。と言ったり…そんなに私を狂わせたいのですか?」
彼の言葉に自分でもびっくりする…。あれは…夢ではなかったのか…。
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