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「片づけをしてきます。大丈夫ですか?」
私がベッドへ入るのを見ながら、彼が話しかけた。
「大丈夫です。」
差し出された体温計を受け取って答えた。
寂しいなど言えない。さっきまでは素直に言えたのに…。
「ふふ…。言葉と体が違いますね。」
と言われて彼の視線の先を見ると、そっと洋服の裾を掴んでいる私の手があった。
「あ…。」
慌てて離したら手を掴まれた。
彼を見ると…目が反らせなかった。あまりにも真剣な顔だったから…。
そっと彼の顔が近づく…。
ふとあの女性の姿が浮かび、私は自由な方の手で彼の胸を押した。
「…すみません。泣かないで下さい…。」
そっと私の頬を撫で、いつの間にか頬を伝っていた涙を拭ってくれた。
「もう帰った方がいいですよ。彼女に誤解されたら大変です。」
そう言って顔を伏せた。
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