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「何故、私なんですか?」
「あなたが必要なんです」
放課後の図書室で、図書委員として本の並び替えをしていた我妻の元に、また表裏が近付いていた。
鬱陶しく思っていただけだった我妻だが、今は周りからの変な物を見る目まであり、心の底からどこかへ消えてほしかった。
我妻は普段一人だ。コミュニケーション能力が低い(と思い込んでいるだけだが)のと、読書ばかりしているから。
だから我妻がこうして男子に、しかもいわゆる美少年に属する表裏に積極的に話しかけられているという光景は、翌日雹が降ると例えられてもおかしくないくらい異様なのだ。
「……私は部活を辞める気はありません」
「何故ですか? ……知ってますよ。我妻さんが他人に必要とされる事に幸せを感じるという事」
「……あなたが必要としているのは私じゃないでしょう? 私の血……私の能力なんでしょう?」
率直に退ける。早く我妻は表裏に諦めてほしかった。
「おっかしいな……我妻さんは自分の能力を利用されても、必要とされれば喜んで自分を差し出す。そんな献身的な方だと伺っていたのですが……」
「っ……」
否定できない。現に立橋にそう言い続けていたから。
しかし何かが違う。彼らの必要とする、という言葉とは違い、表裏のその言葉には何の喜びも感じられない。
「私は今の部活が居心地が良いと感じていますから」
「……まぁそこまで言うなら分かりました。どうせあなたの能力はあなたの意志に反して必ず働く物ですから、力ずくという手もあります」
本をしまいきった所でそう言われては、我妻は身構えざるを得なかった。
何をしてくるのか、と戦慄したからだ。
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