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「あ、身構えなくて大丈夫です。今じゃないので。……そうですね、では特別に我妻さんにだけ忠告しておきましょう」
諦めたように踵を返した表裏だったが、その陰から覗く不気味な笑みは健在だった。
「明日……世界は終焉を迎えます」
「……え? それってどういう……」
「さぁ? 部員だけの秘密なので。それではさようなら」
意味深な言葉だけを残した表裏は、とっとと閑散とし始めた廊下を歩いていった。疎ましく思って追い払おうとしていた表裏を、今度は引き留めようとした我妻は自棄に陥る。
世界が終焉を迎える。いかにも我妻の嗜好品であるライトノベルにありがちな言葉なのだが、現実にそんな事を言う人間が西金以外にいたとは驚きだ。
「……一体何をする気なんだろう……」
仕事を終えた我妻は、ひとまずみんなが待つ天文学部の部室へ向かう事にした。
何故自分をこれほど求めるのか。何故あんな意味深な置き土産を我妻にだけ渡したのか。
「こんにちわ」
「お、いい所にきたな我妻! 質問がある」
扉を開いていきなり西金が深刻な面持ちで話しかけてきたため、一瞬何を考えていたのか忘れてしまいそうになった。
「ロリ巨乳とロリ貧乳、どっちが価値高いと思う?」
そしてそんな事か、と少し落胆する。
馬鹿みたいに神妙な面持ちをする西金の後ろでは、雛形と神鏡が胸を張って張り合っていた。
「貧乳はステータスだ!」
「ただの貧乳なんて三次元じゃ普通なのよ! 時代はロリ巨乳よ!」
「けっ、部分成長しちゃった怪獣が需要ある訳ないですよぉだ!」
「全身未熟なあなたが言える事じゃないわよ!」
醜い争い。それも一年生と二年生の。この二人は最近仲良しだと思えばすぐに対立している。
「……というか雛形先輩ってロリって言うより童顔なだけなのでは?」
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