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二人の熱を冷ますように尋ねると、雛形はきょとんとして首を傾げた。
「……そうなの?」
「確かに。雛形は童顔ではあるけど体は大人っぽいもんな」
「黙れ中二病。『西金君は変態の称号も欲しいのかなぁ?』」
「何でここで小拝先生の物真似をぶっこんだ!?」
「とりあえず二人が喧嘩する理由は無くなったね」
再びスルーされて部屋の隅で床をなぞる西金を尻目に、仲裁するように春山が諭した。
いつの間にかお姉さん的な立場になった春山を見て、竜田はすっかり溶け込んでるなと安心した。
「確かに……」
「……なら仲直りだね」
「ですね! ……ところで何で僕らこんな話してたんでしょう?」
ガシッと手を握る二人を見て、やれやれと竜田は子どもの成長を見るみたいに嘆息した。
もうすぐ合宿だ。と言っても何だかんだ期間が延びて、結局合宿自体が開催できるのは夏休み。
しかも佐保姫の悪質な言い回しにより部費だけでは賄い切れない所を合宿所として予約してしまったため、その施設費には自費も含まれる事になっている。
佐保姫を憎みたくなる天文学部員だったが、この合宿には佐保姫も参加する。つまりは佐保姫も自費を出す。
嘘を吐いたとしても何のメリットもないのに、というのが竜田の疑問点なのだが、無論佐保姫はそんな事に答えたりなどしない。
「合宿は海。海なら水着。水着ならスタイル……」
「そうだ、巨乳と貧乳ならどっちがナンパされやすいかだ!」
そんな事でか、と我妻は呆れながらいつも通りの席で本を読み始めた。
しかしいつもとは少し違う。
不思議と動悸が収まらない。
「……あれ? 奏、その手の模様……何?」
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