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それに比べて自分はどうだ、と少し自分に甘くなっていた佐保姫は自問自答する。
今でこそ一年生の十月にいきなり生徒会長として選挙に勝ち、こうして職務をこなしてはいるものの、表裏があと一年早く生まれていたら、もしかするとこの席に座っていたのは彼かもしれない。
そう思ってしまうくらい今の佐保姫は落ち着きがなかった。現にこの部屋の静寂に耐えられず表裏に話しかけた。以前はむしろ寡黙だったのにだ。
天文学部の生徒と仲良くするのはいいが、馴れ合ってだらけるのは話が別だ。
表裏に見習うべき点は今の佐保姫にはたくさんある。
パチンと頬を叩いて、佐保姫は立ち上がった。
「よし、先に文化祭の用意も始めちゃお」
「もうですか?」
「仕事がないなら作るだけ。表裏君も部活がある時は行ってよね? 天文学部も地質学部も、活動内容は根本的に同じようなものだろうし」
肩を優しくポンポンと叩く。
「あはは、そうですね」
相槌を打つも手を止めない表裏は、本当に共感が持てた。
気さくで笑顔が絶えない表裏を、佐保姫は後ろで見守りながら、別の仕事に取り掛かった。
「……同じですね……」
だが、表裏の瞳は笑っていなかった。
***
「先生、もう勘弁してください」
「何惚けた事言ってるのよー、ノルマ達成までまだまだ残ってるわよ? 天橋立君」
表裏が画面を睨み合っている頃、同じように目を充血させながら画面を見詰めさせられている人間がパソコン室にいた。
情報処理を担当している小拝 舞姫(オオガミ マキ)は、その追試を受けている男子の首根っこを掴んで脅した。
「いや、無理っすよ……みんな六時間かけて終わらせた課題を一時間でなんて……」
「つべこべ言わない」
ギュッと更にきつく握られ、立橋 天(タテハシ ソラ)は入院の皺寄せである課題をしぶしぶ再開した。
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