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結衣は現代文の教科書やファイルを机の中にしまい、代わりにクリアファイルを取り出した。そこに挟まった時間割の用紙を眺めて次の科目を確認する。数学。
次の科目の準備をしながら時計に目を向け、言った。
「もう席戻んなよ。先生来るよ?」
「……バイトは?」
「だからやだってば。つか無理」
「今回は労働じゃないんだっつの」
「しつこい。嫌なものは嫌」
結衣はきっぱりとそう言い切る。断固として、意志を曲げる気はなかった。
ふいに凪紗が立ち上がり、結衣に背を向けた。
ようやく諦めて、席に戻ってくれる気になったのか。
けれども凪紗は往生際悪く、結衣に背を向けたままこう呟く。
「あーあ、残念。せっかく透(とおる)、誘ったのに」
「えっ? 透くんもそのバイトすんの?」
結衣は思わず目を見開いて、そう尋ねた。凪紗の口から出た名前が、あまりにも意外すぎて。
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