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あたしが中学校一年生の時、五才上の兄は手首を切って死んだ。
自殺だった。
お風呂場の、冷たいタイルは、兄の体から溢れる大量の血で、真っ赤に染まっていた。
揺すろうとして触った肌は、とても冷たかった。
息はしていた。
あたしが兄を見つけた時、兄はまだ生きていた。
けれど、救急車で病院に運ばれた時にはもう、兄は死んでいた。
死因は、出血死。
兄が自殺をはかった理由は、今となってはわからない。
父は大学受験から来るストレスじゃないかと言っていたけれど、それだって推測にすぎない。
大好きな兄が死んで、しばらくはたくさん泣いた。
あの日から、もうすぐ四年が経とうとしている。
思い出しても泣かずにいられるし、こうして誰かに話せるようになった。
ただ、一つだけ。
心の中にシミのようにこびりついて拭えない、疑問があった。
もしもあの時、溢れる血を止めるすべがあったなら。
ぱっくり開いた傷口を、塞ぐことができていたら。
兄は今もあたしの隣で、穏やかに笑っていたのだろうか――。
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