国王からの依頼

34/45
前へ
/226ページ
次へ
身構えるトウヤ達を、レネイドはまるで「煩わしい動物」を見るような目で見下ろした後、ため息のように鼻息を吐く。 『勝てる見込みなど、万に一つも無いのに戦おうとする。 その気概は、嫌いではない。だが、私は同時に、筋が通っていない事に苛立ちを覚える』 そう告げたレネイドは、何と自分の体を輝かせたかと思うと、嫌っているハズの人間の姿に変わったのだ。 『レ、レネイド様!』 これには、流石のヤタも声をあげ、慌てて自分も人間の姿へと変わる。 「ノージス! 君達も変われ!」 ヤタから怒鳴られたノージス達も、慌てて人間の姿に変わる。 「刀の人間。名前は?」 人の姿となったレネイドの第一声だ。 問われたトウヤは、刀を再び地面に突き刺す。 「朝霧トウヤだ」 トウヤが名乗ると、レネイドは「ふむ」とだけ呟いて、トウヤに近付き、トウヤを黙って“見下ろし”てみせる。 人の姿となったレネイドは、端から見ても筋骨隆々で、半袖の服からのぞく小麦色の二の腕など、トウヤの軽く倍はありそうだ。 だが、2メートルは有るかという身長に対し、顔は小顔で、細い眉は眉間に寄っていて不機嫌そうなものの、鋭い目や通った鼻筋も決して弱々しい印象は与えないが、繊細な人物ではないかと思わせる容姿をしている。 そんなレネイドを見て、トウヤは一言。 「“その手”が好きな人は、間違い無くイチコロだな」 最早何も言うまい。 トウヤの一言を聞いて、ヤタやミリィ・シェインは、卒倒しそうになりながら、そう思う事にした。 「“その手”と言うのは何だ? 今、この場の話に必要な感想なのか?」 トウヤの一言に、レネイドが律儀に問い返すと、トウヤは慌てて首を振った。 「関係ない。アンタの、その姿を見た感想だよ」 トウヤが苦笑混じりに言うと、ヤタは「フン」と鼻で笑い、いきなりトウヤを上空へ吹き飛ばした。 「「「ナッ!」」」 あまりに一瞬過ぎて、ミリィ・棗・シェインは、自分達の頭上を越えて吹き飛んでいくトウヤを、只見上げて声をあげる。 吹き飛ばされたトウヤの方は、上空で体をひねり、何とか着地してみせたものの、吹き飛ばされた時に腹部を強打されたらしく、その場で片足をついて呻き声をあげる。 そんなトウヤを見た途端、ミリィの髪が逆立ち、レネイドを睨み付けたミリィが何かをする前に、レネイドの頭上に人影が現れた。
/226ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6466人が本棚に入れています
本棚に追加