国王からの依頼

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殴られ、吹き飛ばされたハズのトウヤが、一瞬で移動していたのだ。 そして、大きく腕を振りかぶったトウヤが、レネイドに向かって拳を振り下ろす。 だが、レネイドの周りには不可視の防御幕が張られていて、再びトウヤは吹き飛ばされる。 「ちょっと待て! トウヤ! 話すのが先だ!」 吹き飛ばされたトウヤに向かって、シェインが慌てて声を掛けたが、そのシェインも、レネイドの見えない程素早い蹴りで吹き飛ばされてしまう。 「お前ェ!」 シェインが吹き飛ばされた事に怒りを覚えたトウヤは、駆け出したかと思うと、地面に突き刺していた刀を引き抜き、レネイドの右肩目掛けて振り下ろす。 しかし、その刀すら、不可視の防御幕によって止められてしまった。 「まだまだ~!」 トウヤの様子を見た棗が、レネイド目掛けて、かけ声と一緒にナイフを放つ。 「ヤタ様! 杏子を頼みます!」 ナイフを投げたところで、どうにかなる相手ではない。 ミリィは、抱き上げていた杏子をヤタに頼み、トウヤの反対側から、レネイドに向かって炎を投げつけた。 流石に、ミリィの炎はトウヤ達の攻撃等とは段違いに強い。 不可視だったレネイドの防御幕が、ミリィの炎を受けた途端、乳白色に輝き、更に強度を増したように見える。 その証拠に、刀で無理やり防御幕を切り裂こうとしていたトウヤが、じわりじわりとレネイドから離されていく。 「クッソ……」 歯ぎしりしながらトウヤが口惜しげに呟いた途端、レネイドの目がトウヤを捉える。 「ヤバい」とトウヤが感じた時には、レネイドの拳がトウヤの腹部を打ち付け、またもや背後へと吹き飛ばしてしまう。 「グッ!」 腹部から伝わる衝撃に、トウヤは抗えずに背後へ飛ばされてしまう。 すると、吹き飛ばされていたシェインが、素早くトウヤの背中に回り込んで受け止める。 「グハッ!」 受け止められたのは良かったのだが、二度も腹部を殴られたトウヤは、口から血を吐き出して倒れそうになる。 「大丈夫か?」 慌ててシェインがトウヤの肩をつかんで問い掛けると、トウヤは荒々しく口元の血を拭き取って頷いた。 「まだまだっ!」 気合いの声と共に、三度駆け出すトウヤを見て、シェインは冷静に「だから、話し合い……」と呟いたが、ミリィや棗も戦っているのを見て、ため息を一度吐き出した後、籠手に魔力を込めて駆け出すのだった。
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