国王からの依頼

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結果から言えば……。 トウヤ達は、レネイドに指一本触れることは出来なかった。 トウヤを始めとする、ミリィ・シェイン・棗は、それぞれにお互いをフォローしつつ、幾度となくレネイドに挑みかかったが、一度もレネイドの防御幕を破ることすら出来ず、皆が疲れきってしまう。 「クッソ……。せめて一発!」 一番斬り込んだであろうトウヤは、地面に大の字で倒れていたが、刀を杖代わりに立ち上がって、刀を構えるなり「ミリィ!」と声を掛けて突き進む。 「無駄な事を……」 突き進んでくるトウヤを見て、気怠そうにレネイドが呟いた時だった。 トウヤよりも先に、シェインがレネイドの前に現れ、レネイドに向かって拳を振り上げる。 だが、レネイドはシェインを一瞥しただけで、直ぐにシェインを弾き飛ばしてしまう。 そのまま、迫って来ているトウヤに目を戻すと、そこには数本のナイフが浮かんでいた。 「ん?」 浮かんでいるナイフを見て、不振に思ったレネイドが、片方の眉を上げていると、突然ナイフが砕け散り、砕けたナイフの破片が炎と氷を作り出し、水蒸気の煙幕を作り出す。 「ほぅ……」 レネイドが、余裕で感心した声を洩らしていると、煙幕の中から刀を構えたトウヤが、物凄いスピードで突っ込んできた。 トウヤと背中合わせになったミリィが、背後へ向けて炎を放つ事で、加速がかかったトウヤは、まさに流星のようにレネイドへと突っ込んでいく。 刀の切っ先がレネイドの防御幕に当たるや、雷のような激しい音が周囲に響きわたるものの、やはりそこから先に進む事は出来ない。 「ミリィ! 全開!」 刀を握るトウヤが、背中合わせのミリィに伝えるなり、ミリィが放つ炎の量を一気に上げる。 すると、遂に刀の切っ先だけではあるが、防御幕を突き抜けたのだ。 その様子を見て、シェインが「ヨシッ!」と言いながらガッツポーズし、棗は両手を口元に当てて「貫け~!」と、声援を送る。 だが結局は、トウヤ達の快進撃もここまでだった……。 刀の切っ先だけとは言え、防御幕を貫かれたレネイドが、不機嫌に眉を寄せ、更に魔力を解放させた途端、トウヤもミリィも、呆気なく吹き飛ばされてしまったのだ。 「グッ!」 「キャッ!」 吹き飛ばされて、近くの地面に倒れたトウヤとミリィが声を漏らすと、レネイドが倒れるトウヤの眼前に移動し、拳を振り上げながら呟いた。 「人間の分際で、良く挑んだ。褒めてやる」
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