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ノージスの話をまとめると、こうだ――。
ノージス達と同じ様に、成竜に成れないドラゴンだったアストンは、ドラゴンと人間の世界がつながってから程なく「人間の世界を見てみたい」と言って、リュラトル大陸へと向かい、大陸中を旅していたらしい。
「その旅の途中で、アストンは1人の人間の女性と出逢い、恋に落ちた」
それから、2人の間に子供が出来るまでは、それは幸せな時間であったらしい。
だが、時間とは時に残酷な顔を見せる。
アストンはその時、既に千年以上生きていた。
もうしばらくすれば、魔法陣に取り込まれてしまうだろう。
そこで、アストンは万一の事を考えて、妻と杏子をリュラトル大陸に残したまま、一度ブラウンドラゴンの集落に戻る事にした。
「アストンは、自分が魔法陣に取り込まれた後、杏子や妻を助けて欲しいと、オレ達に頼むつもりだったんだ」
ところが、アストンがブラウンドラゴンの集落に着いた途端、アストンは魔法陣に呑み込まれてしまった。
それこそ、一瞬の出来事だった為に、アストンはノージス達に伝えたかった事も、何一つ伝えられないまま、魔法陣に取り込まれてしまったのだ。
更に残酷なことに、アストンの帰りを信じて待っていた妻も、アストンの帰りが遅い事に何か嫌な予感がしたのだろう。
ズメイ大陸へと、アストンを迎えに行くため、杏子と2人でタワナ国沿岸部を目指して旅立った。
だが、いざ小舟を準備し、ズメイ大陸へと渡ろうとした時には、体は言うことをきかない状態になっていたようだった。
「元々、アストンの妻は、体が弱かったらしい。それを、アストンが魔力を送り込む事で、何とかしていたんだ。
だけど、治療してくれるアストンも居ない。
そして、彼女は……『自分が死んだら、この手紙を持って、オレ達の所へ……父親に会いに行け』と言って、息を引き取ったらしい」
そして、杏子は母の言い付けを守り、たった1人でズメイ大陸へと渡って来たのだ。
「レネイド様。オレ達は、レネイド様が人間を嫌っているのを知っています。ですが、この子は……アストンの子供です。オレは、巡回していた時に、この子から手紙をもらい、アストンの妻が、どれだけアストンの事を大切に思っていたのかを知りました。だから、せめてこの子だけは、オレ達で幸せにしたいと……」
そう言ったノージスは、レネイドにすがるような目を向けた。
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