国王からの依頼

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すがるような目をしているノージスを見たレネイドは、眉間にしわを寄せて考え込む。 レネイドが考えている間に、ノージスの話を聞いていたミリィが、再びヤタから杏子を受け取り、ギュッと抱き締める。 「あう……」 杏子からしてみれば、ミリィの力が強かったらしく、苦しげな声をあげた。 「あ……ゴメンね」 力が強かった事を杏子に謝りながらも、ミリィは杏子を放さない。それだけ、自分も“子を持つ母”として、ノージスの話にショックを受けたと言うことだろう。 皆の視線が、レネイドに集まる中、レネイドが呟くように言った。 「手紙を見せろ」 レネイドからそう言われたノージスは、空中に小さな魔法陣を作り出し、その中から手紙を取り出し、レネイドに手渡した。 「…………」 無言で手紙に目を通したレネイドは、何を思ったのか、険しい表情をしながら、手紙をトウヤ達に差し出す。 「いや、その手紙……読んで良いのか?」 差し出さるた手紙を見て、トウヤが戸惑っていると、レネイドではなく、ノージスが頷いた。 「杏子の為に、あれだけ戦った人間だ。読んでみて欲しい」 ノージスに言われるまま、トウヤはレネイドから手紙を受け取り、ミリィ達と一緒に手紙を読み進めていく。 ――最愛の夫へ アストン。貴男が居なくなってから、もう1年が過ぎました。 今、どこに居ますか? 元気ですか? たった1年で、杏子はとても成長しました。元気な杏子と貴男と私。また、3人で一緒に暮らしたい。そう思ったから、私は杏子と一緒に、貴男の所へ行くと決めました。 でも、私の体は、多分もうじき動かなくなるでしょう。 アストン。貴男は、私に言いましたね? 自分も、近いうちに消えてしまうかも知れないって。 でも、私は、貴男がまだ消えてなくて、ただドラゴンの集落から出られないだけだと信じています。 だから、例え私に何かがあったとしても、貴男が杏子を守ってくれると信じています。 アストン。私は、貴男が好き。杏子も大好き。 この手紙は、私に何かがあった時に、杏子に持たせます。 アストン。本当にありがとう。 体の弱い私が、子供を授かり、家庭を持てたのは、全部貴男のおかげ。 私達の宝物。杏子を御願いね。 最後に、心からの愛と、感謝を込めて。 ――貴男の妻。アンより。
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