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巨大なテーブルの上へ移動したレネイドを見上げ、トウヤが疲れた顔で「登れってのか?」と呟くと、ヤタが気を利かせて、魔力で土の階段を作り出した。
これに一番喜んだのは棗だ。
「飛ばなくて良い~!」
満面の笑みを浮かべ、棗は一気に階段を駈け上がっていく。
棗を先頭にテーブルの上へと登ったトウヤ達は、あぐらをかいて座るレネイドに近付き、レネイドを囲むようにして、思い思いの場所に座った。
「さて……」
ヤタを含めたトウヤ達全員が座ったのを見て、レネイドが口を開く。
「先ずは『ご苦労だった』と言っておこう。人間の割には上出来な説得だった」
あくまでも偉そうに告げるレネイドに、トウヤは「そりゃどうも」と相手を小馬鹿にした口調で返し、ミリィ達の顔色を青くさせる。
ところが、言われた当のレネイドは、ミリィ達の予想に反し、ニヤリと笑って見せたのだ。
「ククククククッ……。我らにすれば、羽虫に等しい弱さの人間ごときが良く吠える。朝霧トウヤだったな? その名。覚えておいてやろう」
“人間嫌い”のレネイドが、人間であるトウヤの名前を「覚えておく」と言ったことが、どれほど衝撃的なことかは、ヤタの顔を見れば容易に想像出来るだろう。
それこそ、同じブラウンドラゴンが近くに居れば、トウヤへ畏怖の眼差しを向ける者すら居たかも知れない。
だが、トウヤにしてみれば、レネイドの発言は、それこそ“どうでも良い事”だ。
「そんな事より、これからの杏子のことだよ!」
ヤタが卒倒しそうなトウヤの発言を受けて、レネイドは器用に片眉を上げる。
「ノージス達は、良い親代わりになれると思う。だけど、周りの、他のドラゴン達が人間嫌いで、杏子に辛く当たるなら、杏子は悲しい思いをする事になるんだ!」
トウヤの指摘に、レネイドは平然と言った。
「それは仕方のない事だ」
レネイドの発言に、トウヤが憤慨した様子で噛み付く。
「何が『仕方ない』だ!
昔、アンタに何があったのかは知らないし、知りたくもない。
大切なのは、これから先の事だろ? 杏子の未来の事だろ?」
あまりの暴言に、ヤタが本当にフラフラし始める中、レネイドは平然と言い返す。
「それ程心配するのなら、杏子を連れ帰って育てろ」
そう言われた途端、トウヤは一瞬押し黙ってしまう。
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