国王からの依頼

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レネイドが笑った事で、トウヤはブスッとした仏頂面でレネイドに言った。 「自己満足ですいませんね。どうせ俺は、自己満足を満たしたいだけの、自己中心的な男ですよ!」 素直にとは言い難い、ひねくれた口調なトウヤが可笑しかったのか、レネイドだけでなく、ミリィ達まで笑い出す。 「何だよ! みんなして笑う事無いだろう!」 不機嫌そうにトウヤが全員に言うと、ミリィ達が笑いながら言った。 「やっぱり、貴男は……私の夫ね!」 「何て言うか、“朝霧トウヤ”って感じだよね~!」 「誰彼かまわず振り回すのが、お前だよ」 などと、口々に感想を述べるミリィ達を見て、トウヤが呆れられているのか、褒められているのかを真剣に悩んでいると、笑っていたレネイドが、ヤタに話し掛ける。 「ヤタよ。新たな指示を出す。杏子を、気にかけてやれ」 その指示を聞いたヤタは、満面の笑みを浮かべ、承知した事を伝えるように、レネイドに頭を下げる。 「朝霧トウヤ。お前の愉快な回答に免じて、ヤタを杏子の世話役に付ける。ヤタは、この集落のまとめ役だ。ヤタが杏子の後見人だと私から集落の者全員に伝えれば、杏子を攻撃しようという愚か者はいない。安心したか?」 レネイドから、穏やかな声でそう言われた途端、トウヤだけでなく、ミリィ達もが目を丸くした後、皆を代表するようにトウヤがレネイドに向かって頭を下げる。 「本当に、ありがとうございます!」 トウヤがそう言うと、ミリィ達も一斉に頭を下げた。 「フフ……人間は未だに好きにはなれないが、お前達は覚えておいてやろう」 こうして、トウヤ達の任務は終わりを迎える事になった。 その後、トウヤ達はタワナ国海岸部へと転移し、杏子の母親の遺体を見付ると、丁寧に埋葬した。 「アンタの子供は、きっと元気に育つよ。俺が保証する」 墓石を置き、トウヤがそう言った後、棗はタワナ国へ。トウヤ達は、森羅へと帰って行った。 とある場所で――。 「安心した?」 今まで、トウヤ達の様子を見ていたリュカが、目の前にいる2体の球体へ話し掛ける。 『はい。これで、心置きなく転生出来ます』 低い男性の声で1つの球体が言えば、もう1つの球体は涙混じりの声で『杏子……』と何度も呟いている。 そして、2つの球体は、寄り添うようにリュカの体内へと取り込まれていくのだった。
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