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「え~っと……」
いきなり現れたルフィーナは、トウヤ達にエリシアを渡せと言っている。
対応に困ったトウヤは、ミリィを見やり、素早く“この後のパターン”を考えた。
1、エリシアをルフィーナに渡す。
ルフィーナは満足するだろう。
しかし、ルフィーナから解放された後、エリシアは確実にトウヤ達へ八つ当たりする。
2、エリシアをルフィーナに渡さない。
すぐさま、ルフィーナから攻撃されてしまう。
つまり、どちらのパターンを選択しても、トウヤとミリィは酷い目にあうという訳だ。
「ミリィ。俺達……、何かしたか?」
あまりに理不尽な状況に、トウヤが問い掛けると、ミリィが勢い良く首を振った。
2人が、今の状況を確認しあっている間にも、エリシアはトウヤの背中を突つき、話をしろと促してくる。
意味の分からないトウヤは、仕方無くルフィーナに問い掛ける事にした。
「エリシアを渡す前に、聞きたいんだけどさ……何があって、俺達は巻き込まれたんだ?」
いきなりな展開なのだから、トウヤが問い掛けるのも無理はない。
普通なら、そう思っても良い場面だろうが、ルフィーナはニコニコ笑ったまま、何も話そうとしない。
困ったトウヤは、今度はエリシアに問い掛ける。
「エリシア。何をしたんだ?」
すると、トウヤの問い掛けに、エリシアがサッとトウヤから視線をはずし、聞き取り辛い声で呟いた。
「お酒を……、全部飲んじゃったのよ」
「ハァ?」
「お酒ですか?」
トウヤ、ミリィの順で声をあげると、エリシアは神妙な顔で頷いてみせる。
「ルフィーナ様が予約してたお酒を、全部飲んじゃったの」
エリシアの回答から、時間が経過すること、約2分。
「…………で?」
やっとトウヤの口から出た言葉は、呆れ混じりの問い掛けだった。
「だから! 久しぶりにタワナ国にクラシルと旅行に行ったの!
そしたら、ユエがイチゴ酒を持ってたから……つい……」
「ユエさんが持ってたイチゴ酒を奪って、飲み干したのか?」
説明なのか自棄なのか、どちらとも判別できないエリシアの話を聞いて、トウヤが更に問い掛けると、エリシアはサッとトウヤから視線をそらしてしまう。
「それが原因で、ルフィーナ様が怒られたんですね?」
我が母ながら……。
そんな含みを持たせたミリィの問い掛けに、エリシアは小さく肯くのだった。
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