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エリシアが頷いたことで、だいたいの状況が分かったトウヤとミリィは、お互いの顔を見ながらため息を吐き出した。
すると、そのタイミングを見計らって、ルフィーナが気絶しているクラシルを、無造作に投げて寄越す。
「話は分かったじゃろう?
よくも、妾が楽しみにしておったイチゴ酒を……」
ピクピクと時折痙攣しているクラシルを、双子が指で突っついている姿を、見るともなしに見ていたトウヤは、頭上から聞こえるルフィーナの声に、ため息混じりに頷き、未だに俯いているエリシアの肩に手を乗せた。
「エリシア。いくら何でも、相手が悪すぎる。俺達じゃ、何も出来ないぞ」
「諦めてくれ」と言外に含ませながら、トウヤが話し掛ける。
すると、エリシアはキッ!と目をつり上げ、ルフィーナに向かって声を荒げる。
「確かに、イチゴ酒は飲みました!
でも、まだお酒はあったハズですよ!」
苦し紛れなエリシアの言い分を聞いて、ルフィーナの体から黒いオーラが溢れ出す。
「「オオッ!」」
黒いオーラを見た双子が、驚愕に声をあげたかと思うと……。
「「勝負だァ!」」
トウヤ達の間を抜けて、いきなりルフィーナに飛びかかっていった。
「「チョッ!」」
双子を捕まえようと、トウヤとミリィが手を伸ばしたが、時既に遅く、双子はルフィーナの黒いオーラに触れた途端、トウヤ達の方へ吹き飛ばされてしまった。
慌てて吹き飛ばされた双子を抱き止めたトウヤとミリィは、揃って双子の頭に拳骨を振り下ろす。
「いきなり勝負を挑むな!」
「『私の後ろに来なさい』って言ったでしょう!」
トウヤとミリィの、それぞれに怒られた双子は、揃って頭を抱えてうずくまる。
そんな親子は無視して、ルフィーナとエリシアの睨み合いは続く。
冷や汗を流し、ルフィーナを見上げるエリシアと、黒いオーラを漂わせながら、エリシアを見下ろすルフィーナ。
双方共に動かず、一言も話さぬまま、時間だけが過ぎ、気絶から復活したクラシルが「ハッ!」と声を漏らした時だった……。
一瞬で上空にあったハズのルフィーナの姿が消え、エリシアの前に現れたのだ。
しかも、ルフィーナが現れた場所は、気絶から復活したばかりのクラシルの上。
「グボハアアア!」
ルフィーナに踏みつけられたクラシルは、苦しげな悲鳴を残して、再び気絶するのだった。
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