ルフィーナ参上!

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「喧嘩をしない」と言い返してくる双子を見て、トウヤが口をへの字に曲げる。 「そうかぁ? この間だって、どっちが強いかで言い合いしてたじゃないか? アレは喧嘩に入らないか?」 つい先日の事を思い出し、トウヤが言うと、双子ではなくミリィが言った。 「口喧嘩くらいなら、それこそ日常茶飯事よ。でも、“あんな感じ”の喧嘩は……、確かにこの子達はしないわね」 揶揄ではなく、本当に空間を魔力で歪ませ始めたルフィーナとエリシアを見ながら話すミリィに、トウヤは虚ろな顔で頷いた。 「確かに、あんな事はしないわな」 諦めと、精神的な疲労を漂わせるトウヤを見て、双子がわざとらしくため息を吐いてみせる。 「親父も大変なんだな」 「チチ様、辛い時こそ遊ぼう」 「何でか、お前達が少し大人になった気がする」 双子に向かって、トウヤがしみじみ呟くと、ミリィがバッサリと切り捨てた。 「バカな事言ってないで、あの2人を止めてよね」 ミリィに言われた事がショックだったらしく、軽く肩を落としたトウヤは、おもむろにポケットから一枚のカードを取り出した。 そして、トウヤにしては珍しく、カードに魔力を流し込むのを躊躇っていたが、ルフィーナとエリシアの周りの小石や土が、宙に浮き始めたのを見て、カードに魔力を流し込む。 「あ~っと……聞こえるか?」 控え目にトウヤがカードに向かって問い掛けると、直ぐに聞き覚えのある声が、カードを通して聞こえてくる。 「今の私は、政務でとても忙しいのだが、お前の声は……明らかにトラブルが起きていると分かる声をしているな?」 カードから流れる声を聞いた途端、双子は「長だ!」と言って喜び、ミリィは何とも気まずそうに身じろぎする。 「いや、忙しいのはすっっごく良く分かってるんだけど……。 実は今、俺達の目の前でエリシアとルフィーナがいがみ合ってて……、このまま放ってたら、多分公園が滅茶苦茶になると思って……」 申し訳無さそうに、トウヤがカードの向こうにいる“レザリアス”に呼び掛けると、カードから「ククク……」と、レザリアスの笑い声が聞こえてくる。 「本当に、お前の周りにはトラブルが絶えないな。少し待っていろ。今の仕事が一区切りついたら、助けに行ってやる」 笑いながら話すレザリアスに、トウヤは「出来るだけ、早く来てくれ」と頼むのだった。
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