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甘い朝の時間はあっという間に過ぎて、時刻は登校するにはまだ少しばかり早い時間。
準備があるからと帰ろうとした優衣に少々待ってもらって一緒に家を出た。
家にいたってやることもないし、どうせ通り道だ。手間は変わらない。ならちょっとでも長く一緒に居たい。
デレデレどころかデロデロである。
「お待たせ」
制服に着替えた優衣が家から出てくる。やっぱり私服もいいけど制服も似合うなーとデレてしまう。でも顔には出さない。
「今来たばっかりだから」
ギャグじゃないから怖い。この子、俺がバレンタインデーにわくわくする男になる前に、大体三十秒程度でバッチリ着替えてやってきた。
「それは待ち合わせに遅れてやってきた人に掛ける言葉だよ。そういえば、そんなやり取りしたことないね」
「そうだっけ?」
「待ち合わせは殆ど楓の家か私の家だから」
言われてみれば、そうだ。多分。世界の創造主が忘れているんじゃなければ、俺たちはその定番のやり取りをしたことがない。
「やってみたいなー」
想像したのか微笑む優衣の横顔はいつも通り太陽のよう。いつになってもドキドキする。
今日は別の所での緊張もあるわけだけど……例のブツはどのタイミングで渡されるんだろう?
1.まだその時ではない。
2.サプライズで靴箱に入れられてたり。
3.そもそもそんなもの用意されていない。
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