ここからリア充の時間

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恥や外聞を捨てて、俺は安地を求めて飛び込んだ。 「あの虫野郎、どこいきやがった!? 便所か!?」 「いねぇな。確かに追い詰めた筈なんだが……」 幸い、突入した現場は見られていないらしい。 「女子トイレに隠れたんじゃ?」 「まさか。それはないだろう?」 「じゃなきゃ可笑しいだろ。それこそ窓から飛び降りでもしない限り逃げられる筈がねぇ」 緊張が高まる。助けてくれた人物を見ると、その人物は『大丈夫』と小声で囁いて、俺を手近な個室に促すと、出入口に向かって。 「あの、ここで男の方が屯(たむろ)していたら何か良からぬことを企んでいる怪しい集団に見えてしまいますよ?」 それだけで辺りは静かになった。見なくても音だけで三々五々に散らばっていくのが解る。   どうやら助かったらしい。でも直ぐに出るのは危険だ。もう少しここにいることになりそうだ。
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