6人が本棚に入れています
本棚に追加
「ちょっ、雅彦っ」
「まさっ!」
俺はいつの間にか、走り出していた。
ホームの階段を駆け登り、駅の中を走った。
沢山の人にぶつかった。
汗が背中に張り付く。
足がもつれた。
でも…今はそんなことより
彼女に会わなきゃいけない気がした。
彼女に会って何を言えばいいか、そんな事は頭になかった。
ただ、彼女は俺に何か伝えた。
その声を聞かなくちゃ。
彼女を必死で探した。
「はぁ、はぁ」
ずっと走ってたら、さすがに息が上がった。
足元に汗が垂れる。
なにやってんだ?
俺は…
その場に座りこんだ。
歩く人が俺を迷惑そうに避けていく。
「はぁ、はぁ」
もう一歩も動けない気がした。
「あっ、あの…」
聞き慣れぬ声に、びっくりして振り向いた。
「どうしたんですか?こんなとこで…」
あぁ、さっちゃんか…
一瞬彼女かと思った。
「いや…なんでもないよ。さっちゃんはどうしてここに?」
彼女は確か自販機に行ってたはず。
「自販機にお茶がなくて、売店まで行ったら迷ってしまって」
そう言う彼女の手には、大事そうにお茶が握られてる。
ハハッ…
「ありがとう。お茶を買ってくれてたんだね。」
俺は立ち上がり、さっちゃんの頭を軽く撫でた。
「えっ…」
「ありがとう。本当ありがとう」
本当ありがとう…
さっちゃんが来なかったら、俺は何かに取り憑かれたように彼女を探してたよ…
俺はさっちゃんと一緒に、みんなのいるホームに戻った。
最初のコメントを投稿しよう!