6人が本棚に入れています
本棚に追加
「雅」
大学の非常階段に座っていたら、松岡に声をかけられた。
「はい、コーヒー」
冷たいブラックコーヒー。
俺の好きなメーカーだ。
「松岡、講義は?」
「単位あるからいいや。ドイツ語わかんないし」
「ハハッ…確かに」
松岡が俺の隣に座った。
カチッ
タバコの匂いが漂った。
「校内は禁煙だぜ」
「だな…」
注意しても、松岡は気にするそぶりもなくタバコを吸った。
「一本ちょうだい」
松岡がびっくりして、振り向いた。
「はっ!吸うの?」
びっくりして固まった松岡から、タバコを一本頂く。
「高校以来かな…」
そう言って、俺は松岡から火をもらいタバコを付けた。
フゥー
久しぶりのタバコは若干クラッときたが、噎せることはなかった。
「この間からちょっと変だぜ。知佳ちゃんも心配してる。タバコも吸うなんてな。」
「あぁ…」
わかってる。
あれから、何をしてもぼーっとしてる。
結局水族館も、その後の食事も、心あらずだった。
知佳が終始心配していた。
最初のコメントを投稿しよう!