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「あちぃ」
松岡が手の平で、風を仰ぐフリをする。
確かに暑い。
この車内何度あるんだ?
「だから雅、車で行こうって言ったじゃんか。」
「俺は今朝酒が残ってたの。」
そう、昨日は先輩に連れていかれて、朝まで飲んでた。
「別に少しぐらい残っても、いいじゃねぇの。」
「ダメ、飲酒は乗らない。そんなに言うなら松岡お前が運転しろ。」
「俺免停って、知ってるでしょ。」
「じゃあ、仕方ないだろ。」
フゥーと松岡が小さいため息をつく。
「相変わらず堅いねぇ…」
小さい声で、だが聞こえるように松岡が言う。
「いいじゃない。私電車久しぶり。楽しいけどなぁ」
知佳がいい感じに場の空気を変えてくれる。
ちょっとだけ、イラッと松岡にしたけど。
そうだ、今日は知佳と久しぶりのデートなんだ。
松岡なんかに空気壊されてたまるもんか。
そう思って、知佳を引き寄せた。
フンワリ甘い香水が鼻孔をつく。
もうすぐ目的の駅につく。
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