出逢いは『scout』

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    『おいッ!爺!テメエ、親切に  してやったのに 閉じ込める  たぁ どういう事だ!』 扉の真ん前で 喚き散らす俺の 背中が突飛ばされた。 重厚な一枚板の扉が当たったらしい。 開かない筈の扉が 開いてる。 そこで ヒョロリと細い黒づく めの男が 恭しく頭を下げてた。 『お客様でしたか、失礼いたし  ました』 しかし、四角い縁の眼鏡から寄 越す視線は どう見ても 『何、ンな所に突っ立ってるん  だよ?邪魔だ!』 と言ってる様にしか見えなかっ たのだが… 『イイさ、別に…俺は帰るトコ  だ、退けよ』 ススッ、と扉の外側に眼鏡野郎は引っ込んだ。 開け放たれた扉から外へ、出よ うとしたなら 見えない壁にブ チ当たり、俺は石の廊下で尻餅 をついていた。 …な、なンだよ? コレってまるで… 俺はそっくりな場所を思い浮かべていた。  城壁… アレと同じか? …クイッ、と眼鏡を押し上げる 細身の男は 何か おかしな物を 見るような顔で 俺を見下ろし ている。 的確に言えば、  『化物を見るような眼』 その目には 唾棄すべき物、と して 俺が映っていた。 『御館様の許へ ご案内いたし  ましょう…どうぞ?』 一応 礼儀として 手を差し伸べたらしいが、その面にはデカデ カと『触るな!』と書いてある も同然だった。 いけ好かない野郎だ。 思い切り掴んで引っ張ってやっ たら、 見事に べっちゃり前に のめった。 ザマぁ見やがれッてぇんだ! 『おい、寝転んでないで爺の  トコに連れてけや。』 ニイッ、と歯を剥き出してやっ たら ヤツの額に青筋が立つ。 益々 面白れえ。 からかい甲斐 満点だな! 無理矢理引っ張り上げて、馴れ馴れしく黒い服の肩に腕を回してやった。 汚物でも付いた様な 情けない ツラが 笑えていけねえ。 『ほら さっさと爺のトコに案  内しろ。でないと 片っ端か  ら部屋荒らして廻るぞ?』 眼鏡野郎のインテリ面が引きつったのは 多分気のせいじゃないだろう。    
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