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『クラウス!何をしてるの?
エドゥアルトがお待ちよ』
上から降って来たのは 金の鈴
を転がす様な声。
階段の最上段、磨き抜かれた手
すりに半分しなだれかかって
下を覗いてる女のモノらしい。
纏めずを流した豊かな金の巻き
毛が肩を覆い、白い顔に 銀の
双眸、赤い唇がふっくらと柔ら
かそう。
その唇に見合う肉感的な身体に
は、ズルズルした布切れみたい
なドレスが引っ掛かっているのだが、前やら後ろが開きすぎて
いる。
『アルジェナ様、申し訳ござい
ません、ただいま』
叱責で 一瞬にして面白い玩具
は 元のメガネ鉄仮面に戻った。
ちぇ、つまんねえの。
『あなた、お名前は?…随分と
立派な体格だわ、素敵ね』
ユラリ、上体を起こした女は
ゆっくり 階段を降りて来る…
降りて……来るんじゃねえ!
『お前、ソレ以上来んな』
『はぁ?』
女の顔色が変わった。
『私は親切に声をかけてやった
というに、何よ?生意気な』
逆効果か!
エラい勢いで階段を駆け降りて
ジリジリと女は間合いを詰めて
来やがった。
『…別に 親切にひろ、なんへ
言っへねえひ!』
鼻を塞ぐと呂律が回らない。
『なんですってぇ!!
エドゥアルトの客だと
思って下手に出てれば!』
振り上げた腕を 鞭の様にしな
らせて 俺の頬めがけて降りお
ろす。
俺はガシッ、と受け止めて 勢
いをつけて 女を突き飛ばして
いた。
軽々と吹っ飛んだ女は 階段の下まで転がってしまった。
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