出逢いは『scout』

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    『く―――――――っせえ!  臭うよ!この女!』 転がった女も メガネ鉄仮面も 呆気にとられて俺を見てる。 なんていうのか…… 芳醇な果実の匂いと、 甘ったるい花の香りと、 濃厚な麝香? 混ざり合って 鼻が曲がりそう な臭気になってンだよ! 俺様は 鼻が利くんだ! 鼻をつまんで喘いでいると 横でメガネ鉄仮面がスン、と鼻 を鳴らした。 『…臭い?…ですか?』 アルジェナと呼ばれた金の女の 頬に血の色が上ってゆく。 『クラウス―ッ!  あんたまでこんな奴と一緒に  なって!…只じゃおかないわ よッ!』 乾いた笑い声が降って来た。 上階から見下ろして、笑って、笑い倒して。仕舞いには咳き込んでしまった爺が言う。 『若いモンだけで 楽しんでな  いで、この爺も交ぜてやって  くれんかの?』 我に返ったメガネ鉄仮面…クラ ウスは 申し訳ありません、と 頭を下げ、鼻をつまむ俺の背中 をコッソリ どやしつけた。 『エドゥアルト!聞いてよ!  ヒドイんだから!』 科をつくると甘え声で訴え始め たアルジェナを、爺はチラリ、 横目で見ると 溜め息を吐く。 『アルジェナ、臭いとは言わぬ  …言わぬが…もう少し控えめ  にするが良いよ』 悔しげに唇を噛んだアルジェナ だったが爺には従順だった。 『…エドゥアルトが そう言う  なら…控えるわ…』 しゅん、と肩を落として去って 行く。…さっきの猛々しさは 一体何だったんだか…。 今度は 俺が呆気にとられる番 だった。 『さて、お若いの。話があるん  じゃが?よいかの?』    
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