出逢いは『scout』

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    『お若いの、頼みがある。』 爺の表情は真面目そのものだ。 『儂の後を頼みたい。』 はあ? なンの話だ? 『館から出られぬのが証拠。  其方には 一方ならぬ魔力が  備わっておる。』 やっぱ 変な仕掛けがあるのか、 この館には。 『儂に変わって 火竜共から  街を護ってくれまいか?』 …俺に頼む?よりによって? 『儂も老いさらばえた。後継を  任せられる程の魔力の持ち主  は 其方しか居らぬ。』 へえ!見込まれたモンだ。 『年寄りの最後の願いじゃ。  聞き入れて貰えぬか?』 今日 初めて会ったのに? 俺の素性を一切聞かないで? 気にならないのか? それとも。 得体の知れない奴でも 魔力が 強けりゃいい、ってか? 良く知らない若僧に 頭を下げる程切羽つまってるンか? 難しい顔で黙り込む俺を 爺は 決して急かさない。 爺も沈黙を保ったまま。 爺の後ろに控えるクラウスは、 信じられない…といった面持ち だが、主に意見する事なく 佇んでいる。 重たい沈黙がわだかまる部屋で 手をつけられない紅茶が ゆっ くりと冷めてゆく。 ついでに逆上せあがった爺の頭 も醒めてくれるといいんだが。 沈黙に耐えかねたか、爺は何や ら話し始めた。 『…先程 顔を合わせた女…  あれは 竜人の血脈の者でな。  竜の感情を感じ取る事の出来  る一族の末裔よ。』 へえ?竜の感情…ねえ? 『出来るならば あれと…アル  ジェナと一緒になって貰って  共に街を治めて欲しい。』 世迷言もいい加減にしろッて! 狂った様に 俺は笑い始めた。    
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